中国発・大手不動産破綻危機、日本のマンション価格下落の引き金になるか

【マンション業界の秘密】
 中国の大手不動産会社が破綻するかどうかで世界中の注目を集めている。
多くの人の記憶に残るのが、2008年のリーマン・ショックだ。あの時は世界中の金融
システムが、一時的に機能不全に陥ったかのようだった。

 今回は中国発のクレジット・クランチが起こるのか。それは今のところ何とも言えない。
世界の金融システムはそのリーマンの経験を経ているので、同じ軌道をたどることはない
だろう。しかし、違う面で世界経済へショックを与える可能性は十分にある。

 それによって日本のマンションの価格が下落する可能性はあるのか。私は十分にあり
得ると考える。理由を説明しよう。

 新築でも中古でも、マンションの価格は基本的に需要と供給の関係で決まる。
価格が下がるとすれば、それは現状の価格で売れなくなったときだ。

 どういう場合に売れなくなるのか。大きくは2つ。第一には、日本経済がはっきりと
不況に見舞われたときである。人々は自分の収入や仕事の先行きに不安を感じるときに
長期返済のローンを組んでまで物件を買おうとはしない。

 次は、金利が高くなったときである。あるいは、住宅ローンの審査が厳しくなって、
融資が下りない場合だ。これは「金融引き締め」という状態。景気が良くなりすぎて
加熱しそうな時に取られる金融政策だ。

 世界経済は20年から新型コロナの感染拡大という予想外の事態に見舞われた。
もちろんこれは経済にとってマイナス。そこで各国ともに金融を緩和して、経済が失速
しないように努めた。

 日本も金利を下げて金融緩和に踏み出したかったのだが、それは不可能だった。
日本の金利は長らくゼロ状態。そこで政府は現金をバラまくことにした。昨年行われた
1人10万円や1社200万円の給付金である。

 そのせいか、東京の都心や湾岸では中古マンションの価格が上昇してしまった。
 ただ、経済が不調であるときに金融政策が引き締めに転じることはない。むしろ緩和
されるのが経済政策のセオリー。
 このまま中国発の経済ショックに襲われた場合、どうなるのか。多くの企業は業績を
悪化させるだろう。そこに勤務する給与所得者たちは賞与等が減ることになる。当然、
マンションも売れにくくなる。
 さらに株価が下落に転じると、富裕層向けの都心の高額物件も動かなくなる。マンシ
ョン価格が下落する第一の理由、「不況」である。  しかし、日本の金融はすでに緩和
されきっている。金利はゼロで、融資基準は甘々。金融緩和のカードは残されていない。

 09年から12年間、日本は「悪夢の民主党政権」時代であった。この時期、日本経
済はリーマン・ショックの傷が癒えず、不況が続いていた。であるにもかかわらず、金
融緩和は不十分だった。株価は7000円前後まで低迷し、為替は1ドル=80円前後
経済は低迷し、マンション価格もダラダラ下落。あれと似た状況がこの先やってくるか
もしれない。
                        「夕刊フジ 榊 淳司」